自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

自閉症・知的障害者の将来・就職・就労

自閉症知的障害の子の将来の就職先(就労)について、一般就労、障害者枠、A型、B型などの言葉を聞いたことがありますか?

労働条件は?賃金はいくらもらえるの?ちゃんと生活していけるの?

そんな不安にお答えするために、以下にまとめました。

 

障害者の雇用は大きく2種類「一般就労」「福祉的就労」

障害者の将来の就職には、大きく分けると、「一般就労」と「福祉的就労」の2つがあります。

その2つがそれぞれどんな就労形態かをご説明します。

 

一般就労とは

一般就労とは、一般企業で雇用契約に基づいて働くことで、原則、法定最低賃金以上の対価が支払われます。
ただし、最低賃金の減額の特例があります。
最低賃金の適用される労働者の範囲 厚生労働省

 

地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
ただし、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
(1) 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

「最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれ」とは、
分かりやすく説明すると、こんな場合です。
障害があっても、本人の能力の範囲で働いてもらいたい。
でも、給料は、みんなと同じ分は払ってあげられない。
同じ仕事をするのに、他の人の3倍時間がかかるから、3分の1の給料しか払えない。それでも良ければ雇用します。
という会社があったとします。

 

せっかくそう言ってくれて、本人も家族もそれでよいと納得しているのに、法律が、「他の障害のない人と同じ給料を払わなければいけない」と決めてしまうと、他の社員から不満が出てしまって、かえって能力と給料が不平等になるから雇えない、ごめんなさい、となってしまいます。

 

そのように、かえって不平等になって雇用の機会を失うおそれがあるので、労働能力に見合った賃金を、使用者が都道府県労働局長へ届け出て許可を受けることを条件に、認められることになっています。

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

一般就労ってどんな働き方?

一般就労では、一般企業などに、雇用主との雇用契約が成立され、最低賃法などの労働法規の対象となります。会社の一員としての責任と役割が求められます。
一般就労には、「一般雇用」「障害者雇用」の2つの雇用形態があります。

 

一般雇用

一般雇用とは、一般の方と同様の形で就労する方法です。職場に障害を伝えない(クローズ)で働く場合が多いですが、伝えて(オープン)働く方もいます。

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

障害者雇用

障害者雇用とは、障害があることを前提として、働く雇用形態をいいます。 「障害者枠で働く」という言い方もよくされます。労働条件や 労働時間に配慮してもらって働きます。
労働条件には配慮してもらえますが、仕事に必要な能力はある程度求められます。
障害を証明する療育手帳などが必要です。
(例)スーパー
・食品を並べる(文字を読めること、お客様との最低限のコミュニケーション)
・レジ打ちをする(お金やおつりの概念、適切な扱い、お客様との最低限のコミュニケーション)
( )内は、必要だと考えられる能力
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

障害者の就労形態

障害者の就労形態としては、一般就労以外にも、自営や障害福祉サービスでの就労があります。
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について 自営業

 

福祉的就労とは

障害福祉サービスの利用者として働くことで、「就労移行支援事業 」と「就労継続支援A型事業」「就労継続支援B型事業」「就労定着支援事業」 の4つがあります。

 

就労移行支援とは

就労移行支援事業とは(規則第6条の9)、通常の事業所に雇用されることが可 能と見込まれる者に対して、
①生産 活動、職場体験等の活動の機会の 提供その他の就労に必要な知識及 び能力の向上のために必要な訓練、
②求職活動に関する支援、
③その 適性に応じた職場の開拓、
④就職後 における職場への定着
のために必要な相談等の支援を行う。 (標準利用期間:2年)
※ 必要性が認められた場合に限り、最大1 年間の更新可能

 

※就労移行支援は、職業訓練を受けるところなので、賃金をもらって働く就労とは異なり、逆に世帯所得などに応じて利用料がかかります。

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について 就労移行支援事業

 

就労継続支援A型事業とは

就労継続支援A型事業とは(規則第6条の10第1項)、
通常の事業所に雇用されることが困 難であり、雇用契約に基づく就労が 可能である者に対して、雇用契約の 締結等による就労の機会の提供及 び生産活動の機会の提供その他の 就労に必要な知識及び能力の向上 のために必要な訓練等の支援を行う。 (利用期間:制限なし)
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

就労継続支援B型事業とは

就労継続支援B型事業 (規則第6条の10第2項)とは、 通常の事業所に雇用されることが困 難であり、雇用契約に基づく就労が 困難である者に対して、就労の機会 の提供及び生産活動の機会の提供 その他の就労に必要な知識及び能 力の向上のために必要な訓練その 他の必要な支援を行う。 (利用期間:制限なし)
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

就労定着支援事業とは

就労定着支援事業 (規則第6条の10)とは、
就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練の利用を経て、通常 の事業所に新たに雇用され、就労移行支援等の職場定着の義務・努力義務である6月を経過した者に対して、就労の継続を図るために、障害者を 雇用した事業所、障害福祉サービス 事業者、医療機関等との連絡調整、障害者が雇用されることに伴い生じる 日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び 助言その他の必要な支援を行う。 (利用期間:3年)

 

※就労定着支援事業は、職業訓練を受けるところなので、賃金をもらって働く就労とは異なり、逆に世帯所得などに応じて利用料がかかります。

 

 

障害者の就労:まとめ

こちらに、以上の就労形態を図にまとめてみました。

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

知的障害者の労働の賃金(給料)

障害者白書 平成24年版 厚生労働省 知的障害者の給料(H17年度)

<平均月額>

知的障害者全体  11万8千円
就労継続支援A型  7万2千円
就労継続支援B型  1万3千円

 

知的障害者の40%が月給1万円以内
10万円以上は10%程度

 

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

実態・給料について B型事業所よりA型事業所の方が給料が高いとは限らない!

上記の障害者自立支援法を見る限りでは、軽度の障害で指示に従って働ける障害者はA型で、指示通り働けない障害者はB型、というイメージを受けますよね。
そして、上記の、障害者白書の知的障害者の給料を見るとすると、A型の方が給料が高く、B型の方が低いです。

近年は、B型事業所が増えています。なかなか、会社として売り上げがしっかりと出て、儲けを分配できるほどゆとりのある会社は少ないのが現実です。

 

一般的に、A型就労の方が、給料が高い事業所が多いですが、すべての事業所が、A型の方が高いわけではありません。

なぜかというと、
企業と同様に、就労継続支援も、商品やサービスを売った利益を社員に分配するため、売上が上がらない事業であれば、給料も安くなります。

A型だから高い給料が保証できるというわけでもないんですね。

 

就労を決める際は、労働条件や賃金を比較して、就労先を決めることになります。
特別支援学校高等部では、事業所の見学をいくつも行っています。
地域によっては、事業所自体があまりない地域も多いようです。

 

事業所が無い場合、特別支援学校高等部で出来たママ友が、自分の子ども達のために、事業所を立ち上げるケースも多いようです。
身体障害者の場合は、自分たちで事業所を立ち上げることもあるようです。
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

事業所選びに大切なこと 賃金だけでなく仕事の内容・本人の適正

就学と同様に、合わないところに就労したことで、うつや統合失調症などの二次障害の精神障害を引き起こしてしまう事があります。

自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

本人の性格や能力に合っていること、そして、職場の人に理解し大切にされるところを選んであげることが大切です。

 

労働賃金以外に将来 生活・家計を支える障害年金

このように、障害者の労働賃金は1万円以下の事も多く、本人が最低限の生活をするにも足りないような状況です。そのため、障害年金をもらって、家計の助けにしています。

障害者白書 平成24年版によると、在宅の知的障害者(20歳以上)では、年金又は手当の受給者が74.9%(H17年度)だそうです。
障害年金などの必要なものは申請して、生活の支えにしたいですね。
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

将来を見越して育てていくことが大切

子どもが小さいうちは、可愛い、手がかかる、でなんでも親がやってしまったり・・・
でも、思春期になれば、性別が違うために、男の子はママと一緒にお風呂に入ることは好ましくありません。
女の子は生理が訪れ、自分で汚物の処理をする必要があります。
身の回りのことが自分でできるためには、小さい頃から、手先を器用にしたり、身体を清潔にしたり、掃除したりすることをしつけていかなければなりません。
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について
就職についても同様で、マナーやルールを守ること、人との最低限の受け答え、本人の知識や能力の向上、癇癪を起さずに自分で気持ちを切り替える力、困った時に助けを求められる力など、様々な力が必要です。

 

障害の程度によっては、生涯、人の力を借りて暮らしていく必要がある子もいらっしゃると思います。
一方、本人の障害の程度によっては、育て方によって、きちんと自立できる大人に育てていくことも可能です。

 

子どものできることを大切に、出来ない事に寄り添って一緒にスモールステップで出来るようにしてあげることが大切です。
そして、障害の程度を考慮しながら、人の力を借りることを最小限に、少しでも自立していけるように考えてあげることが大切ですね。
自閉症・知的障害者の将来の就職先(就労)について

 

<参考記事>

>> 家庭療育の効果「無理だと言われた普通学級へ!言葉の遅れを取り戻して就学した事例」

>>IQって何?知的障害の程度と能力・就労等について