自閉症の子どものトイレトレーニングによくある5つの悩みと対処法
幼い子どもに、親が教える事で難しく大変なのは「トイレ」ではないでしょうか。
特に、自閉症・発達障害の子どものトイレトレーニングについては、「うまく教えられるのか不安」と悩まれる親御さんが多いように思われます。
自閉症・発達障害の子どもが持つ、発達の遅れの種類や程度は、傾向こそあれども本当に“人それぞれ”。
ネットで調べても「うちの子のトイレの悩みとピッタリ!」と一致するような悩み・対処法が見つかりにくいことが、トイレトレーニングを難しくさせる1つの要因かもしれません。
しかしそれでも、「何かトイレトレーニングを成功させるための案がほしい……!」とお考えのママやパパのため、今回は自閉症・発達障害の子どものトイレトレーニングに関してよくある5つの悩みをピックアップし、それぞれの対処方法をまとめてみました。
自閉症・発達障害の子どものトレーニングに不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
トイレトレーニングについて、「すぐにおむつを外すことが大事」と勘違いしている人が多い印象です。
しかし本当に大事であり、トイレトレーニングの軸とするべきは「おむつ外し」ではなく、「トイレで排泄する習慣を気長に作っていくこと」。
おむつを履いていても、トイレで出るならそれでよく、無理して早くおむつを外す必要はないです。
上記のような小さな経験を積み重ねることが大事で、定型発達の子どものトイレトレーニングでよく聞く「2時間おきにトイレに連れていく」、「排泄する“たび”にトイレに連れていく」という方法を、自閉症・発達障害の子が無理して行う必要もありません。
しかし、「トイレの場所を覚える」、「ただ座る」などが最初のステップのトイレトレーニング自体は、定型発達の子どもと同時期かそれより少し遅いくらいには、始めたほうがいいです。
時間がかかるかも・失敗をするかもということは前提であり、「最終的に、“おむつが外れて自分でトイレに行けるようになる”のは就学前(小学校入学前)でもいいのですが、始めるのは早く始めるべき」と思っています。
「なぜ、自閉症・発達障害でも早くトイレトレーニングを先延ばしにしないほうがいいのか」は、項を改めてもう少し詳しく説明しますね。
【ちなみに】パンツに漏らす経験でのトイレトレーニングは、自閉症・発達障害の子どもには逆効果
定型発達の子どもによくある、あえてパンツに漏らす経験をさせて、トイレを早く覚えるようにするトレーニングは、自閉症・発達障害の子どもには逆効果になることが多いです。
自閉症・発達障害の子どもは、失敗経験をしてダメなことは何となく理解できても、「では、どうすればいいのか?」がわからないため、パンツに漏らすことがトイレを早く覚えることには繋がりにくいでしょう。
自閉症・発達障害の子どもから言葉が出なくても、トイレトレーニングは始められる!
失敗を恐れずにトイレトレーニングを早く始めて、気長に続けることが大切です
自閉症や発達障害を持たない、定型発達の子どもの場合、トイレトレーニングを始める年齢は2歳~2歳6か月の間が一般的。
この知識が背景にあると、
という、考えになりがちです。実際に、そうしている親御さんも多いでしょう。
しかし本当のことを言えば、「自閉症や発達障害=トイレトレーニングは遅く始めても大丈夫」という認識は、療育上は好ましくないのです。
言葉の指示が通らなくても、そして「おしっこしたい」「おしっこ出た」などの言葉が出なくても、トイレトレーニングを始めることはできます。
むしろ、「子どもから言葉が出てくるようになるまでは……」と先延ばしにして、トイレトレーニングの開始年齢が遅くなると、トイレトレーニングが難航する傾向が見られます。
年齢とともにトイレの間隔が空いてくるため、座らせても出ず、トイレでの成功体験がなかなか得られにくくなったりします。
また、自分なりのトイレの場所にこだわりが出てしまい、実際のトイレの場所に変えようとしても嫌がって暴れることもあります。
こだわりの強い自閉症の子どもには、はじめから、正しいことを教えてあげたほうがうまくいきやすいんです。
“おしっこをしたら、抱っこしてトイレにサッと連れていく”など、毎日の習慣づけによって、言葉の出ない自閉症・発達障害の子どもも、体感的にトイレを理解しようとします。
定型発達の子どもよりも時間がかかるかもしれないことは、「そういうものだよね」と捉え、失敗をおそれずに早く始めて、気長にトイレトレーニングを続けることが目標です。
言葉が出なくても、“ご飯を決まった場所で食べる”など生活習慣が身に付いてきたら、トイレのトレーニングも徐々に始めてみましょう。
おそらく「おしっこしたい」「うんちがしたい」という自覚はあります。
言葉でトイレの場所を伝えるのではなく、おしっこやうんちを始めたことに気付いたら、すぐにトイレへ連れて行き、体感でトイレの場所を覚えさせるほうが効果的!
自閉症や発達障害の子どもは、‟おしっこやうんちをしたくなったら、「決まったところ」へ行く”ものだと分かっていても、その「決まったところ」がトイレに結びついていない場合があります。
例えば、‟おしっこはなぜかソファの後ろでしちゃう”ケースなどがそうです。
おしっこしたい・うんちがしたいという気持ちになったら、ソファの後ろや机の下など、自分のこだわっている場所へ行くわけですね。
言葉が遅れている子どもの場合、「トイレはそこじゃなくて、あっちでしょ」と教えても理解できません。
また、「そこでトイレしちゃダメって何回も言っているのに!」と怒ってしまうと、おしっこやうんちをすること自体を我慢してしまう可能性があるので危険です。
‟トイレじゃないけど、決まったところでおしっこ・うんちをする”パターンでは、子どもがおしっこやうんちを始めたことが、ママ・パパの目に分かりやすいはず。
子どもが「いつもの場所」でおしっこ・うんちを始めたら、抱っこしてトイレまで連れていき、「本当のトイレの場所」を根気よく体感させてあげましょう。
こだわりではなく、身体がうまく使えていないのかも?
毎日の遊びのなかに、身体を動かすトレーニングを取り入れよう!
‟足の甲を床にペタッとつけて、うずくまるような姿勢でしかできない”など、普通の姿勢でトイレができない子どもや、「コレ!」という決まった姿勢でしかトイレができない子どもが、自閉症や発達障害の子どもの中には多く見られます。
「こうしないとおしっこがでない!」という、その子だけのこだわりの可能性もありますが、トイレに関係なく正しい姿勢をとることができない可能性にも目を向けたいところです。
自閉症や発達障害の子どもには、身体の硬い子、または自分の思った通りに身体を動かすのが苦手(=身体の使い方が上手でない)子が、よくいます。
筋肉や関節が硬く、力を入れたり踏ん張ったりすることが苦手なために、トイレも難しくしているのかもしれません。
アスレチックがある公園へ遊びに連れて行ったり、お家ではボール遊びや体操を一緒にするなどして、身体をのびのび動かし、自然に身体を鍛えられるような工夫をしてみましょう。
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⇒ 感覚統合とは?発達の問題と家庭で改善して身体を上手に使うには
‟家以外でトイレできない理由”をよく探ってみましょう。
もしかして、単なるこだわりではなく体質が関係しているかも?
「家ではトイレでおしっこするようになったけど、外のトイレではなぜかおしっこできない」というパターンもあります。
焦らずに、「どういうシチュエーション(理由)でトイレができないのか?」を探ってみましょう。
家以外でトイレできない理由が、‟心理的なこだわりであるのか、そうではないのかで、ママ・パパができる対応は大きく異なります。
“心理的なこだわりではない”パターンで、親の見守りや習慣づけでの対処が難しいものに、「感覚過敏」があります。
自閉症や発達障害を持つ子どものなかには、感覚が鈍いこと(感覚鈍麻)の反対で、光がまぶしくて外で目をあけるのが辛かったり、音が本来の音量よりずっと大きく聴こえる等、‟ある感覚”にとても敏感な子どももいるのです。
例えば自閉症で聴覚が過敏な場合、大きな音が不快もしくは怖いために、エアータオルがあるトイレに入れない子どもが結構多くいます。
心ではなく体質の問題、「感覚過敏」が原因でトイレができないなら、親ができる範囲のサポートで何とかすることは難しいです。
‟行動範囲で「エアータオルが無いトイレ」の場所を把握し、そこに連れていけるようにする”など、回避的な対処が求められます。
‟動物アレルギーの人が、動物を触らないようにする”のと、同じですね。
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「感覚で理解できる成功体験」を積み重ねることが大事
定型発達の子どもと同じように“トイレでのおむつ替え”から始めてみよう
トイレトレーニングはじめ、子どもの成長速度は人それぞれ。
定型発達の子どもでも、トイレトレーニングに行き詰まることは多々あるのですから、自閉症・発達障害の子どもだって同じです。
何度も繰り返し述べるようですが、気長に、習慣を付けるように、トイレトレーニングに取り組みましょう。
もしもトイレトレーニングがうまくゆかず、子どものモチベーションが下がっているようであれば、成功体験の与え方を見直してみましょう。
成功体験のよい例として1つ挙げられるのは、トイレ内でのおむつ替えです。
自閉症や発達障害の子どもは、言葉の理解が遅く(もしくは拙く)、トイレトレーニングについて口で褒めたり指示したりしても、ピンとこない場合が多いです。
トイレの中でおむつを替える ⇒ 体感的にトイレがおしっこやうんちの場所だと分かる
地道なことのようですが、こうした小さな理解・体験・成功を積み重ねて、少しずつトイレができるようになります。
以上、自閉症・発達障害の子どもを持つママ・パパが、トイレトレーニングに関してよく悩むことを取り上げました。
実は、定型発達の子どもも、自閉症や発達障害の子どもも、トイレトレーニングでやることに大きな差があるわけではありません。
「習うより慣れろ」とよく言われるように、言葉であれこれ教え込むのではなく、習慣づけと意識づけ、そして見守りを行うことが、すべての子どものトイレトレーニングの基本です。
ただし、自閉症や発達障害の子どもがトイレできるようになるまで、やはり時間はかかるかもしれません。
そして、失敗をすることだって多いかもしれませんが、「まだうちの子には早かったのかな……?」と親の判断でトイレトレーニングを諦めることはせず、失敗をおそれず気長にチャレンジしていきましょう。
この記事で話題にしたトイレトレーニングについては、『汚さずらくらくオムツはずし』の講座でもっと詳しく解説しています。
またその他にも、身の回りのことを自分でできるように教えていく講座など、多数ご用意していますので、気になった方はぜひ、下記リンク先をご確認ください。
⇒ 澄川綾乃のことばカンタン家庭療育『すくすく動画講座』
<お役立ち情報>
発達障害や自閉症・言葉が遅い子どもを育てるための情報をまとめています。
言葉、遊び・お勉強、人との関わり、指先・運動、身の回りのこと、などに分けて、具体的な関わり方を書いていますので、是非参考にしてくださいね。
療育にはどんな種類があるの?言語療法って何をするの?自閉症の診断ってどんな意味があるの?お耳の検査って何するの?そんな疑問に1つずつお答えしていますので、わからないことがある方は是非、チェックしてみてくださいね。
自閉症の息子の育児ブログはこちら(0歳から幼児・小学生まで)
家での様子、保育園での様子や小学校での様子、先生方が工夫してくださったこと、お薬の話、など、年齢ごとにまとめていますので、参考にしてくださいね。
発達障害や自閉症・言葉が遅い子どもの出来ないを出来るに変えるお手伝いをしています。療育だけでは物足りない方、家でもなにかしてあげたい方は、澄川綾乃のことばカンタン家庭療育へ是非、ご相談ください。
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