自閉症の病院診断事情 診断が意味することってなんだろう

自閉症の病院診断事情 診断が意味することってなんだろう

自閉症の診断時期や診断するかどうかについては、子どもの状態によっても違うでしょうが、診断は病院や医師によっても大きな違いがあるように感じます。
これまで、多くの言葉が遅い子のご家族と接する中でご家族からお聞きした自閉症の診断についての事情をまとめました。
この記事が、これから診断を受けられる方、診断名を告げられて苦しんでいらっしゃる方の、前向きに考えられる助けになればと思います。

自閉症の病院での診断時期は

1歳や2歳の早い段階でも、病院で自閉症の診断を受ける場合があります。
一方で、1歳や2歳頃は様子見と言われていたけれど、
3歳になってから、または就学前などに診断を受けたというケースもよくお聞きします。

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自閉症と診断するかどうか 病院や医師による違いも

自閉症の診断については、診断するかどうかというところから、病院や医師によって違いがあるようです。ご家族が言われた言葉をもとに、診断の意味を考えてみたいと思います。

 

「自閉症の診断はしません。何の意味もないから。」とは?

「自閉症の診断はしません、と言われました。
どういうことなのでしょうか。
結局のところ、うちの子は自閉症なんでしょうか。」
私のところへご相談されるご家族の中で、
このような事を医師から告げられて相談にいらっしゃる方はとても多いです。
特に、幼児期のお子さんのご家族からよくお聞きします。

 

「自閉症ではない」と言ってもらえないために、不安に感じてしまうご家族が多く、

こういう相談はとても多いのです。

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「自閉症の診断はしない」の後に医師から言われた言葉をお聞きしていると、

そのときに「自閉症の診断をしても何の意味もないから」とあわせて言われる方も多いようです。

 

それは、
「自閉症と診断されても、一般的な対処方法は『療育』であり、
自閉症の診断を受けていなくても『療育』は受けられるから」
という意味で言われたことだと推測できます。

市町村による療育、病院による療育、児童発達支援や、放課後等デイサービス、などの療育は、診断名も療育手帳も必要ありません。
発達の遅れについて医師が記載して(診断名ではなく遅れの程度を記載)療育をうけるための受給者証を市町村に申請すれば良いので、診断名は不要です。

 

診断名が無くても療育が受けられる一方で、
診断名を受けたことによる親のショックはとても大きいため、
診断自体をしない、という医師もいます。

 

自閉症だと知って、悲観して、変に悩んでしまったりするよりも、
今まで通りわが子を大切に育ててほしい
そういう医師の想いだと、私は解釈しています。

ですから、自閉症かどうかを気にしないで、

今まで通り、お子さんを可愛がってあげてほしいと思います。

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「自閉症です。特性が薄まることはあっても なおることはありません」とは?

受け止められない親も・・自閉症を受け止めるってどんなこと?

診断名をつけない医師がいる一方で、早い段階から断言される医師もいらっしゃいます。

私の所へも、沢山の方から、苦しい胸の内の相談があります。

「自閉症スペクトラムと診断されました。
薄まることはあっても、なおることはないと医師から言われました。
ショックを受けました。

親の私から見ると、どうしても子どもが自閉症だとは思えません。
受け入れられていないからでしょうか?」

こういうお悩みも、沢山の方から相談を受けます。

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親さんの中には、自閉症と言う言葉がどうしても自分の子どもには合わないと思われる方も多いのです。
自閉症という言葉が、実際の子どものイメージとは違うと感じさせてしまう事もあります。
自閉症、という感じを見ると、自分を閉ざす、
「うちの子は、お友達とも関わろうとしているんです。
ちょっと言葉が遅いだけで・・・」

 

でも、実際、自閉症の子は、そんな自分を閉ざしているように見える子ばかりではありません。
実は、自閉症の子の中にも、人懐っこい子もたくさんいます。
幼児期に、療育手帳の軽度や中度の判定を受けているお子さんの多くが、
お友達に興味を持って、ちょっかいを出したり、
ときにはコミュニケーションが成り立つこともあります。

自閉症の子はコミュニケーションが全然できないのではなく、苦手なだけなんです。

 

とは言っても、あえて自閉症だとは思いたくない、それは親として当然の想いだと感じます。

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では、どうして、親も受け入れられない診断名を、あえて、出すのでしょうか。

それは、きっと、医師はこういうお考えなんだと思うんです。
将来にわたって、子どもを手助けしてほしい、
覚悟を持って育ててほしい、
どんなに成長しても、この子には、一生、誰かの助けが必要。
成長したから大丈夫なんて目を離してしまったら、この子は幸せな人生を送ることができない。
それを忘れないでほしい。

 

医師の診断は、こういう意味なのだと思います。
だからこそ、なおることが無いと強調されるのです。

私は、このお話しを聞いていると、医者が強調しているのは診断名ではないんじゃないか、と思うんです。

お子さんが幸せな人生を送るために、一生、見守って、手を差し伸べてあげてほしい。

そういわれたら、どうですか?

 

受け止めるべきことは、診断名ではなく、子ども自身のことだと思うんです。

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私も、息子が自閉症スペクトラムだと診断されています。

でも、私は、息子を障害者だとは思っていません。
障害者だとは思っていなくても、息子の理解できない事、苦手な事、出来ない事はしっかりと把握し、
学校やデイサービスなどへ情報を流し、協力して育てています。

息子の将来についても、一生見守る覚悟です。
自分が亡くなった後に息子が生活していくことも考えるべきときが来るでしょう。

 

幸せな人生を送れるように考えてあげることは、自閉症の子に限りません。

定型発達の娘に対しても、見守りって必要なんじゃないかな、って思っています。

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もう1つの医者の想いがあると私は気づいています。
こんな風に言われた方がいらっしゃいます。
「無理に普通にやらせようと思わないでください。この子には無理です。」

 

どんなことが無理な事なのでしょうか。
それは、たとえば、子どもによっては普通学級に無理に入れても、授業が理解できず、拒否反応を起こして、教室から飛び出してしまう子もいます。

教育は、そもそも、親のためではなく、子どものためにあります。

子どもの発達や気持ちを無視して、形だけ普通にしてみても、実際教育の内容が頭に入っていかなければ教育は無意味なものになってしまいます。

そういう意味で、医者がはっきり伝えるために、あえて、診断名をはっきり言う、という 場合もあります。

子どもの出来ることを見極めて、分かるように教えていくことはとても大切なことですね。

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「自閉症の診断は 親が希望すれば診断します」とは?

上記のように、自閉症だと知って、悲観する親もいれば、
逆に、子どもの育てにくさの原因を知って、自分の気持ちに整理を付けたい親さんも多いです。
自分の育て方が悪いんじゃないか、と悩み続けてしまう方もいらっしゃるのです。

 

親さんの気持ちに寄り添って、診断名を知りたい方にだけ伝える、という医師もいます。
また、親さんの中には、こんな方もいらっしゃいます。
自分は子どもが可愛くて仕方がない。子どものためならなんだってする。
でも、園の先生や祖父母など、子どもの周りで関わる大人に子どもの様子を話しても、理解してもらえない。
診断名を言ってもらうことで、周囲の人に説明しやすくなる。
こういう事情で知りたがる方もいらっしゃるのです。

 

そこで、医師の方で、診断する、しないをはっきり決めるのではなく、
親の意思にゆだねる、という医者もいるのです。

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「自閉症」と診断する医師の想いは

ここまで読んでいただけば、診断している医師にも、それぞれ考え方があり、

それはどの場合にも、子どものためを思って、ということが理解していただけたかと思います。

言われた言葉は、初めて聞く親にはショックな言葉かもしれませんが、
医師の言葉の裏にある本当の想いに気づいて、前向きに子育てしていってほしいと思います。

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子どもが自閉症と診断された親の気持ちは

子どもが自閉症と診断されたことで、自分の育て方のせいではないと、
前向きになれる方もいらっしゃいます。

一方で、そうではない方もいらっしゃいます。

 

病院で、子どもが自閉症と診断され、はじめは、自分のせいではないと安心した。

でも次第に、子どものせいで私は苦しめられているんだと、
だんだん子どもが憎らしく思えるようになることもあります。

 

子どもが出来ない事への焦りで、子どもに怒鳴ってしまったり・・・
そんな風に、子どもへの思いが間違った方向へ行ってしまったり・・・

 

結局は、自閉症であろうとなかろうと、子どもの状態には変わりがないのです。
育てにくさの原因が親の育て方にあるのか、自閉症で子どもの側にあるのか、

理由をさぐることは、ひとつ間違えば、
親子の間で責任のなすりつけ合いのようになってしまうこともあります。

それでは、幸せにはなれません。

 

子どものアドバイスや診断名を聞くときに大事なことは、

聞いた事を、今後どう生かしていくか、なのです。

 

自閉症、ということばを言う医者は、自閉症のことを親に勉強してほしいと願っての事でしょう。

勉強をすれば、子どもの困った行動にも、どう対処すればいいのかが分かってきます。

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自閉症って結局なんだろう

かつては、高機能自閉症と自閉症、と言われていた区分が、自閉症スペクトラム障害、とひとくくりになり、自閉症の子どもは、特徴がはっきり当てはまる子どもだけではなく、部分的に当てはまる子どもももっといる、ということで、「スペクトラム=周辺」という言葉が使われるようになりました。

 

こうやって、自閉症の定義は変わってきています。

かつては、障害とは言われなかった子が、今は障害という診断名がつくようになりました。時代によって、子どもも大人も、社会から求められることは変わるからなんです。

つまり、生まれた年代によって、障害の定義は変わるのです。

 

であれば、自閉症というのは、この文明が発達した豊かで複雑な社会を作ってしまった人間が生み出したものなのかもしれません。

自分たちが世の中を複雑にし、それについていけない人を自閉症、と呼んでいるのかもしれません。

 

かつては自閉症でなかった人が、今、自閉症と呼ばれて障害者として行政の福祉サービスを受けています。

であれば、自閉症って、何なんだろう?

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私は、思います。

親として、自閉症を障害者と思う必要なんてない。

だけど、助けを必要としている。

行政の助けを受けるには、ときには自閉症という名前が合った方が理解されやすいこともある。

診断名は、必要な時にだけ使えばいい。

だから、自閉症かどうか、にこだわるのはやめて、

今目の前の可愛いお子さんを大切に育ててほしいと思います。

 

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