幼児の言葉を発達させるために親ができること |「もっと喋ってほしい」とお悩みの方へ
幼児(赤ちゃん~子ども)は、生後2ヶ月ごろの乳児期に発する「アー」「ウー」から始まって、ものすごいスピードで言葉を覚えていきます。
自分の子どもの言葉の発達に関して、上記のような思いを持たれている親御さんは多いでしょう。
しかしその思いとは裏腹に「なかなか言葉が出てこない」、または「他の子どもと比べて言葉が少ない」などといった、悩みを抱えることも増えてきます。
今回は、幼児の言葉の発達の流れを汲んだ、より多くの言葉を引き出しやすいコミュニケーションの取り方や、幼児の言葉の発達についてよくある悩みとその対処法について、まとめました。
まずお伝えしておきたいのは、幼児の言葉の発達には大きな個人差があるということです。
「最初の1語が出るのが遅かったけれども、後はどんどん喋るようになる子ども」もいれば、「喋りだしは早かったけれども、語彙(ごい)が増えていくのはゆっくりな子ども」もいます。
自分の子どもと、他の子どもの言葉の発達を比較する必要はありません。
以下では、1歳ごろ・2歳ごろ・3歳ごろの3段階に分けて、幼児の言葉の発達の過程とそれぞれの時期にあわせて取りたいコミュニケーションの例を挙げていますが、たとえそれらにピッタリ合っていなくても、「子どもの発達が遅れている」とは決めつけないことが大切です。
先述したように、生後2ヶ月くらいから子どもは「アー」や「ウー」など、母音を発するようになります。
その数ヶ月後には「アーアー」と母音を繋げることができるようになったり、「ダー」と子音を発するのです。
上記のように、意味を持つ単語をハッキリと話す前に、赤ちゃんが口にする言葉を喃語(なんご)と呼びます。
気に入った喃語を連発するのは、生後6ヶ月ごろの赤ちゃんであることが多いです。
喃語は10ヶ月ごろから徐々に減っていき、「ママ」や「パパ」など意味を持つ単語を1歳前後で話します。
⇒ 喃語について詳しく知りたい人はコチラから
※「喃語とは?赤ちゃんはいつから喋る?」のコラムにリンクしています。
1歳ごろまでの、「喃語~単語」の発達段階にある子どもが、何か言葉を発した時に、その喃語を反芻する、つまりマネをしてあげると、喃語を発する機会や喃語の種類が増えていきやすいです。
また、喃語は何らかの効果音に基づくことが多いので、車がきたら「ブーブーきたね」と話しかけたり、犬がいたら「ワンワンだよ、かわいいね」などと、積極的に話しかけてみましょう。
「アーアー」「ウーウー」の意味を、完璧に理解することは専門家でも困難で、ママやパパが「話してくれて嬉しい!」と伝わるように反応することで、次の段階の言葉(=意味を持つ単語など)を引き出しやすくなります。
こちらの記事に詳しく書いていますので、参考にしてくださいね。
>> 喃語はいつまで続くの?早く言葉が出てほしいママのための関わり方
1歳ごろからの幼児は、意味を持つ単語を覚えて話すようになります。
「ママ」や「パパ」などが代表的な、子どもの初めての言葉は、初語とよばれています。
そして単語の語彙が増えてくると、次は単語と単語を組み合わせた、短い文章を話し始めます。
例えば「バナナ」と「ちょうだい」を組み合わせて、「バナナ、ちょうだい!」とバナナが欲しい意思を言葉で表すようになります。これが二語文です。
二語文のバリエーションが豊かになるのは、単語の語彙がある程度まで増えた後で、年齢で言うと2歳ごろ。
早い子どもは、二語文が発達してからあまり間をあけずに、さらに多くの単語を繫いだ三語文も扱いだします。
>> 語彙爆発っていつ?言葉が遅い子の語彙爆発はある?ない子はどんな子?
何か気に入らないことがあって「ママ、イヤ!」と怒り出す日もあるかもしれません。
上記のような、俗に言う“イヤイヤ期”に悩まされるのも、二語文そしてさらに進んで三語文を話し始める、2歳ごろからが多いのです。
この頃から「言葉が出ない」の他に、「(言葉は出るけど)うまく会話ができない」という悩みが増えてきます。
⇒ 幼児の二語文の発達について詳しく知りたい人はコチラから
※「二語文とは?いつから?二語文の例と出ない・少ない幼児への教え方」のコラムにリンクしています。
⇒ 幼児の三語文の発達について詳しく知りたい人はコチラから
※「三語文とは?いつから?少ない・出ないと思った時の対応方法」のコラムにリンクしています。
1つの単語で意思表示を始めた子どもが、さらに単語を繋げて二語文でお話できるように、どんどん単語を引き出す質問をしてみましょう。
例えば「たべる!」と子どもが言ったら、「はいどうぞ」と今日のオヤツを渡すのではなく、「何が食べたい?チョコ?それともクッキー?」と、選択肢を出してみることがいいです。
“自分で選んで、それが言葉で伝わる”という成功体験は、子どもが「会話をするといいことがある」「もっとたくさん伝えたい」という想いを抱くキッカケとなり得ます。
子どもが二語文を覚えてからも、語彙を増やすために会話の工夫のしがいはたくさんあります。
単語と単語の繫ぎ合わせではなく、文章で子どもと会話ができるように、“プラス1語”を意識して話しかけるといいでしょう。
例えば、「バナナ、ちょうだい!」と子どもが言った場合は、「バナナひとつ、どうぞ」。
「おっきいワンワン、かわいい」と言ったら、そうだねとリアクションをした後、「おっきいワンワン、かわいくてお利巧さんだね」など。
子どもの発している言葉の範囲で、会話を完結させないことがポイントです。
⇒ 言葉の遅れを改善して安心して幼稚園へ:無料メール講座で3歳4歳の軽度な遅れ対策
二語文、三語文、多語文と、続けて話せる単語の数が増えてくると、それはやがて1つの文章になります。
言葉の発達が早い幼児は、‟大人顔負け”の勢いで流ちょうに話すこともあるでしょう。
文章での会話が成立するくらいまで、子どもの言語能力が発達する年齢は、おおよそ3歳ごろだとされています。
>> 3歳になったら喋るって本当?言葉が遅い子が3歳に喋り始めた事例について
言うことを聞く・聞かないはさておき、親と子ども、お互いの要求や意思を言葉で共有できる段階にはあるでしょう。
⇒ 幼児の言葉の発達過程をより詳しく知りたい人はコチラから
※「言葉の発達段階の順番と出てこない時の引き出し方」のコラムにリンクしています。
様々な種類の単語を口にし、ほぼ文章で会話ができるようになったら、「どうして?」あるいは「どうやって?」を引き出すことに挑戦してみましょう。
これまでは、子どもが‟欲しい物を伝える”ために、あるいは‟やりたい事を伝える”ために、会話をしていたかもしれませんが、ここからは子どもに起こった出来事を共有してもらう方向にも、会話を導いてみてください。
例えば「今日保育園で、ゾウの絵を描いたよ!」と嬉しそうに見せてくれたら、「すごいね」「うまいね」と結果を褒めるだけではなく、
などと質問して、理由や手段を考える機会を与えてみてください。
「ゾウさんおっきくてカッコよくて、好きだから描いた!」、「1番好きな動物って先生に言われたから描いた!」、あるいは「灰色のクレヨンでゾウさん描いた!」など、子どもが‟人に分かってもらうための言葉を自分で選んで”話す力が、育まれます。
⇒ >> 会話が出来ず園の出来事を話してくれない 子どもと会話を楽しむ方法
ここまで、幼児の言葉の発達の流れを簡単に説明してきましたが、何でもその通りにうまくいくとは限りません。
「子どものことを分かりたいだけなのに、うまくいかない……」と大人が頭を悩ませることは、決して珍しくはないでしょう。
以下では、幼児の言葉のやり取りに関してよくある3つの悩みに、どう向き合えばいいのか、その‟例”を紹介します。
子どもの発音が未熟で、少しの言い間違いがあるレベルは、気にしないで大丈夫です。
逆に「○○じゃなくて△△でしょ」と言い直しをしつこくさせると、子どもが言葉を発すること自体に苦手意識やプレッシャーを感じるようになります。
「ママやパパが怒るから話したくない……」という気持ちが拡大すると、意味を正しく分かっている言葉でも口から出なくなる、どもりが子どもにあらわれる場合があります。
仮に発音がめちゃくちゃで、子どもが何を言っているのか分からなくても、気にせずニコニコ頷くなどして、「話したい」という気持ちを大切に育てていきましょう。
子どもの語彙が少ない場合、大人の質問不足が影響しているかもしれません。
‟大人が子どもに喋ってほしい言葉”を無理やり教えるのではなく、‟子どもが知っている言葉に関連する、新しい言葉”を1つずつ教えることが大事です。
「する」「やる」など、何にでもとって代わるような‟便利語”を、普段から使っていませんか?
例えば「自分でやってね」という言葉は、「自分で着てね」「自分で食べてね」「自分で取ってね」を表しています。
すべて「やって」で済ませていると、語彙は増えていきません。
幼児の言葉がどんどん発達していく時期は、「食べる」「歩く」など、固有の言葉を大人がきちんと使うことを意識してみてください。
「子どもと会話のキャッチボールができないな」と思ったら、そもそも‟言葉を理解していない”のか、それとも‟投げ返す言葉が少ない・うまく選べない”のかを推測してみましょう。
前者・言葉を理解していないと思われる場合には、まずは理解できる環境に子どもを置くことが大事です。
子どもに話しかける時は、子どもの気が散ってしまう物事をできるだけ遠ざけて、「○○ちゃん、聞いてね」と前置きし、子どもが話に集中できる状態にしましょう。そして、短く分かりやすく話しかけると良いですよ。
そして後者・投げ返す言葉が少ないのだと思われる場合には、先ほどの「語彙の悩み」の対処法と同様に、普段の会話で大人からの質問の回数を増やすことが大事です。
子どもが返事に困っていたら、「○○かな?それとも△△かな?」と選択肢を出して、新しい言葉に触れさせましょう。
<関連記事>
>> ことばの遅れとおとなしいや無口との違いって何?ことばが遅れると何が困るの?
以上、幼児の言葉が発達していく流れと、その時々のコミュニケーション、そして言葉の発達に関する悩みの対処例について、まとめました。
コラムの最初でも述べたように、幼児の言葉の発達には個人差があり、言葉の教え方に「これ!」という正解はありません。子どもの成長を長い目で見守ってあげてくださいね。
それでもやはり、子どもの言葉の発達が遅れていることに不安を感じたら、お住まいの地域の保健所や、お近くの小児科に相談しにいくとよいです。
しかしそうしたところでは、「お子さんのペースに合わせましょう」、「様子を見ましょう」という方針になることが多いことも、また1つの現実です。
保健所や小児科が子どもにできることと、親が子どもにできることは違います。
子どもの言葉の力を育むために親ができること、それがここまで何度も述べてきた「問いかけ」です。
‟大人から子どもにたくさん話を振ってあげること”、これを習慣にして言葉の力を育んでいきましょう。
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